宮台真司 (社会学者 / 首都大学東京教授)
荒川強啓 (フリーアナウンサー)
片桐千晶 (フリーアナウンサー)
荒川 はい
宮台 あの、憲法って英語でConstitutionです。法って言葉が入っていません。
荒川 うん
宮台 これつまり、みんなで統治権力をどのようにいただくのかとういのを契約し合ったものっていう意味なんです。
荒川 いただく?
宮台 うん。簡単にはこうです。自治。
荒川 ええ
宮台 僕たち民主って言うでしょ? 民主の本義は多数決ではないんです。自治なんです。自分たちで自分たちのことを決めること。これがね、民主主義の本義なんです。
荒川 ええ
片桐 うん
宮台 で、自分たちで自分たちのことを決める。えー、そこに、統治権力が勝手に介入してこられてしまっては自治が成り立ちませんよね。
荒川 そうですね。
宮台 だから統治権力が介入してはいけない市民たちのコミュニケーションの領域を定めたものが、これが人権規定なんです。
荒川 うん
宮台 えぇ、人権ってのは、天賦人権論(すべて人間は生まれながら自由・平等で幸福を追求する権利をもつという思想。)うんぬんかんぬんってのは実はどうでもよくて、その本質的な機能は、もう一度言いますよ? 自治に国家権力が勝手に介入できないようにするためのものなんです。
荒川 それが立憲主義(政府の統治を憲法に基づき行う原理)ということに繋がるわけですね。
宮台 はい。だからあのぉ、憲法という言葉をね、あのぉ・・・もつ、例えば中華人民共和国憲法とかね、ソビエト憲法とかあったりするので、言葉は意味がないんです。言葉ではなくて、今申し上げたように、人々の自治に介入してはいけないという風に統治権力を制約する、言わば総合的な契約をしている、これが憲法なんですね。
荒川 はい
片桐 うん
宮台 だから人権規定、つまり『統治権力が国民の生活に勝手に介入してはいけない』という規定を持たないものは憲法ではないんです。憲法という名前が付いていても。
荒川 はい
宮台 だからその意味で言えば今回の自民党の憲法草案は、あの、まったく憲法に関する議論にはなっていない。
荒川 だから国家権力だったり、その時の為政者(いせいしゃ / 政治家、官僚等。政治を司る立場の者。 )が何をしでかすのか分からないので我々はそういう人たちを縛りつけるという意味で憲法があると。
宮台 そうですね。そうですね。よく、教育義務とかね、徴兵義務とか納税義務とかをね、『コレ、国民の義務、規定しているじゃないか!』とかって頭の悪い人がいるんだけど、これ英語で読むと必ずね『As provided by law』って書いてあって『仔細は法で決める』って書いてあるんですね。つまり、一見憲法が国民に命令しているように見えても、これはズルする奴を許さない法律を作れっていう風に国民が統治権力に命令しているという形なんです。
荒川 そういうことですね。
宮台 まぁこれは常識として知っておいて頂きたいですねぇ。
荒川 はい
宮台 あの、憲法というのは国民が従うものではなくて統治権力を国民がコントロールするものなんだ。
片桐 うん
荒川 縛りつけておく。勝手なことをやらせないぞ!っていうことですもんねぇ。
宮台 はい。で、その形を持っていなきものは憲法ではない。
荒川 はい
宮台 もうひとつは憲法の意味は、自治を支えるために、えぇ、国家はあるだけで、自治を妨げてはならないというのがポイントなんですね。・・さて、いいですか?
荒川 はい
宮台 さっき強啓さんおっしゃいましたよね。『もう統治権力の横暴にはこりごりだ。』
荒川 うん
宮台 横暴な課税だったりね、勝手な戦争だったりとか。あるいは勝手な宗教弾圧だったり。まぁ実際それが歴史でしたよね、ヨーロッパやアメリカのね。
荒川 はい
宮台 だから、その悲劇を共有した人間たちが『もう二度と御免だ!』っていうことでお互いに決まり事を作って統治権力を枠の中に封じ込めた。さて我々はそういう悲劇の共有を実はしていない。でそれが、実は自分たちが憲法を作ったかどうかの問題ではなくって悲劇の共有をしていないので・・・『いや原爆落ちたよ』って言うかもしれないけれども、残念ながら自力で立ち上がっていないんです我々は。アメリカのおんぶにだっこで立ち上がってきてしまったので、これは悲劇を共有したとは言えないので
荒川 うん。だから日本の独自の憲法を作れって言う声の人に繋がっていくわけですか?
宮台 それは全くあのぉー、オツム的に問題でね、あのぉ、どういう筋かというと、統治権力の悲劇を共有しているから制約しようとする。自分たちの意思を表明しようとする。これが憲法なんですね。
荒川 うん
宮台 で、僕たちは共有していないから・・・いいですか?やるべきことはこの悲劇の共有に相当するものをもう一度、リマインド、思い出して統治権力の制約に乗りだそう!っていうのが自分たちで作るっていう意味なんですね。意味分かりますよね?
片桐 悲劇を共有する・・・
宮台 そうです。だから自分たちが二度と統治権力に横暴な、えぇ、乱暴な振る舞いは許さないっていう意思を共有し直すっていうっていうことが憲法を自分たちで書くって意味なんです。
荒川 つまり戦前に戻さないぞ!ということですか?
宮台 戦前に戻さないという意味でもあるし、あるいは戦前になかったことだってこれから起こる可能性があるんですね。
荒川 うん
宮台 あの、日本だけではなくどこでもそうなんだけれど、あのぉー、グローバル化進みますよね。で中間層が分解します。格差化、貧困化が進みます。えぇ皆、苦しい状態になります。ね、溜飲を下げたい人も一杯いるし、承認が欲しい人も一杯います。だから先ほどね、別の話題で申し上げたように公のことを語っているようでいながら実は「みんな認めて!僕のこと見て!」みたいなね、コミュニケーションばかりになって
荒川 うん
宮台 えぇー、それこそ多数決みたいなやり方で物事を決めると、デタラメなことばっかり決まっていきかねないんですね。
荒川 いやだから、今の・・
宮台 だ・か・ら、いいですか? だから益々どこの国でも自治が大事になっているの。まともな自治がね。
荒川 えぇ、だからね、その、「悲劇を共有したものはないんだ」と。「だから自分たちの憲法を、押し付けではない自分たちの憲法を作ろうよ!」と言うひとが居るわけでしょ?
宮台 あ、でもそれは筋が悪くてね、元々GHQは日本人に憲法を書かせようとしたんです。その時の条件はね、「新しい民主主義の国家にふさわしい憲法を書け!」って言ったの。
荒川 うん
宮台 ところが全く書けなかったの。
荒川 うん
宮台 大日本帝国憲法を少しですねぇ、化粧した、コスメティックって言ってたけど(笑)。あのぉ、化粧直ししただけのですね、全くデタラメな憲法しか作れなかったんですね。
荒川 うん
宮台 で、しょ・・それでしょうがなくですね、マッカーサーがぁ民政局のですねぇ、あの、民主党系理想主義者たちにね、『まずは草案を作ってやれ』と。『こいつらダメだから』という風にして出来たという経緯がある。つまりね、私のお師匠であった極右、小室直樹先生によると『日本人には憲法を書く能力が無かったし、現在も書く能力がない。』。能力がないという意味は先ほど申し上げたようなことです。
荒川 あのね、宮台さんは憲法改正はどうなんですか?ご自身は。
宮台 憲法改正は賛成なんです。
荒川 で、96条の改正はどうですか?
宮台 っていうゆうな話をするのは実は間違っているんです、筋がね。
荒川 ほう
片桐 うん?
宮台 まず、今申し上げたように、国民がね、憲法の中身より『憲法とは何か?』という事態をまだ分かっていない状況で、ね、憲法改正のハードルを下げるというのはデタラメが起き放題です。
荒川 あ、ハードルを下げるということは96条に手を付けるということですね
宮台 そう。だって国民が憲法とは何なのか理解していないんだよ、まだ。
荒川 うん
宮台 ね? そんな状態で、しかも自民党憲法草案を作った人たちの中にはね、これあのぉ、東京大学法学部出身のカッコ付きインテリさん達カッコ笑いもね、沢山いるわけですよ。
荒川 うん
宮台 でこれでね、まぁホントによく東大を卒業できるかっていうところが東大の問題でもあるんだけども。
荒川 うん
宮台 あのぉー、今申し上げたこと分かりますよね。つまり、憲法というのは法律じゃないんです。
荒川 はい
宮台 なのでぇ。法律じゃないんだっていう事がよく分かっている国民たちが大勢出てくるという状態になった時にはハードルを下げましょう。
荒川 うん。
宮台 国民は分かってないんだから。ハードルは高ければ高いほどいいです。
と話していた。
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コメント
人格ケーン | URL | 4DOcPobI
憲法のおはなし
他のサイトに憲法についてムチャクチャなことを書いているブログがあって、呆れかえっていたんですよ。そういえば宮台真司が憲法についてもっと適切なことを言っていたよなと思って検索していたら、このページに辿りつきました。
おもしろかったっす。参考になりました。ありがとう。
( 15:49 [Edit] )
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