憲法学者・木村草太が語る【集団的自衛権行使が違憲となる理由】

02:16

2014年6月16日に放送されたTBSラジオ『荻上チキ・Session-22』で憲法学者の木村草太さんが集団的自衛権が違憲となる理由を説明していました。番組終盤に木村さんが、「集団的自衛権について取材を受けるがハッキリとした違憲なので5分で説明が終わってしまい、その後に話す政治的な内容ばかり使われる」と漏らしていたので急きょ予定変更してポイントをレクシャーしてもらうことになりました。木村草太

■会話をしている人

木村草太 (憲法学者 / 首都大学東京准教授)
金井辰樹 (東京新聞政治部長)
荻上チキ (批評家 / 「αシノドス」「シノドスジャーナル」編集長)
南部広美 (フリーアナウンサー)




木村 えーと、まずですねぇ、乗り越えるべきハードルは色々あるんですが9条2項です。

チキ はい

木村 戦力ってのがあって、戦力保持は禁止されているんですね。これまでは「自衛のための最小限の実力であればそれは超えない」って言ってきたんですけど、集団的自衛権ってことになれば自国の防衛以外に使うような実力も持たないと当然できないですよね、海外に出かけて行ってやるわけですから

チキ はい、ええ

木村 なので、当然これまで言ってきた日本国への武力攻撃を排除するための最低限度を超えたものを持たなければならない。

チキ そうか、最低限度のレベルも変わるんですね

木村 レベルも変わるんですけど、そこの整合性はどうなっとるのかっていう問題ですよね。

チキ うんうん

木村 だから仮に9条1項で集団的自衛権は禁じられていないってことになったとしても、集団的自衛権を行使するための実力を持てないっていう可能性があるわけですね。

チキ はい

木村 そこをどうするのか?ってことで、1項のことだけ解釈で変えようとしているけど、そこが全然説明ができておらんってことですね。

チキ あー。なるほど2項の問題ですね。

木村 2つ目の根拠がないってところで、(集団的自衛権の行使が)行政権にも外交権にも含まれていないので、日本国憲法がそれをやることを想定していないってことなんですよ。

チキ はい、先ほどの話ですね。

木村 これ、よく私が例に挙げるのは、そのぉー、要するに野球部の部長がいきなりサッカー部の遠征費用を支出しようとしている局面なんですよ。

南部 え!!
チキ はあ!

木村 普通は野球部員が「いや、何で出すんですか!?」ってことになった時に『いやいや、9条で禁止されていないから』って、規約で禁止されていないからって言っているような感じですね。

南部 うわー!
チキ フフフ!(笑)

木村 でも、それ違うでしょ(笑)。だ、出すための特別な根拠がないと出しちゃダメでしょ?って話を我々はしているんですけど、

チキ かつあげ感ハンパないですね(笑)

木村 フフフ(笑)。だから、もちろんサッカー部とちゃんとした関係があって野球部の規約に「遠征費をサッカー部に関しては協力して出す」とかって書いてあれば、まぁ良いですよね、規約に。

チキ はい

木村 でも規約に書いていないんですよ。よくその「書いていないんだから出来んだろ」って言われるんですけど、逆で、ちゃんとした根拠がなくっちゃやっちゃいけないんですよ。

南部 あぁー。

木村 そりゃそうですよね。「だから今やっているのは根拠規定がないので、やっちゃいけないですよね」ってハードルも・・

チキ そもそも書いていないと。

木村 はい、そもそも書いていない。しかもまた手続きも書いていないんですよ。

チキ はいはい

木村 これ条約締結のためにどういった手続きがあるかって書いてあるんですよ?

チキ ええ

木村 でも条約締結以上に重要な対外作業である軍事作業について手続きが書いていないってのは、ちょっと想定できないですよねぇ。

チキ あぁー。よく、「当時は想定していなかったんだからアリなんだ」って議員の人は言うけど、想定していないんだから手続きが取れないと。

木村 もしも、コレ法律で手続きを作った場合って、法律で決めただけなので、法律を替えればその手続きをいくらでも変えていいって憲法だって解釈なんですよ。

チキ まぁ、そうなっちゃいますね。

木村 そうなっちゃいますよね。今国会承認やるとかって言っていますけど、国会承認はあくまで法律で作っている手続きだけなので、それを外しても憲法違反じゃないってことになりますよね。

チキ うん

木村 どういう手続きで集団的自衛権を行使するかって当然国民全体の関心事ですから、当然憲法で国民自身が定めたルールで決めないといけないですよね。

チキ うん

木村 でもその手続きがない。ということで、なので「法律で手続きを作りました」って言っても、『それは憲法で認めた手続きではないですから違憲ですね』ということになる。

チキ 根拠がないと・・

木村 ということで、仮に9条1項のハードルをクリアして、なんか他国の防衛で恐れがある場合は行使できるってなった場合も行使するための実力が持てない。

チキ 最初のやつですね。

木村 ええ。ってことですね。だから2項を改正しろって北岡伸一(政治学者/東京大学名誉教授/安倍内閣の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の委員を務め、集団的自衛権について憲法改正せずとも行使可能との立場をとる)、あのぉー、先生はずっと言ってきたんですね。

チキ うん

木村 その人が、なんであんなこと言いだすのかって私は疑問ですけども(笑)

チキ はい

木村 まず2項で実力が持てない。根拠規定がない。手続きもないということで、どこをどうやって合憲にするのか私には分からないんですよ。

チキ ええ

木村 政府の側に立って訴訟に勝ち切る自信は全然ない。

チキ うん

木村 こういうことを言うと、「いや、訴訟の現場では統治行為を取ってくれるよ」とか、そのぉー、「検察官は起訴しないよ」とかっていう風に、要するにその、司法の部門がお目溢ししてくれるよって反論してくる人もいるんですけど、

チキ あぁ、いますねぇ。いますいます、そういうの。

木村 それ、全然変な話で、今違憲か合憲かって話をしている時に「違憲だけど見逃してくれるよ」って反論にならないんですよ。

チキ そうですねぇ。

木村 むしろ違憲だって認めている証拠をどんどん増やしているってことになるので、今どんどんどんどん違憲だけどやるべきだって議論が溢れてきているので、これ後々訴訟になった時にいくらでも提出できるわけです。

チキ えぇ

木村 だから、皆さんにも訴えたいんですけども、『是非そういう風に言うのは止めましょう』ってことですね。集団的自衛権を行使したいなら「合憲だ!」って言えばいいだけで、「違憲だけどやるんだ」っていう議論は、これは止めましょうってことですね。

チキ なるほど。

木村 以上が、まぁ(集団的自衛権を)行使できない、違憲だっていう理由です。

チキ あ、ホントだ!5分で終わった!
南部 ピッタリ

チキ フフフ(笑)。金井さん、どうですか今の説明。

金井 いやぁ、分かりやすかったですねぇ。特に最後の所なんかはね、1票の格差訴訟で「これは流石に選挙無効はださないだろ」って言っていた政治家が沢山いたわけですね。

チキ ええ

金井 その議論と似ていますね。

木村 そうですそうです。違憲だけどお目溢ししてくれるよって、全然憲法の・・・

金井 「無効までにはならんだろ」ってのとよく似ていますよね。

チキ あぁー。でもそれは立憲主義の議論とは全く別ですよね。

木村 全く別で、司法の現場がしょうがなくやることで、政治家の側が、憲法守りますって政治家の側が言いだす議論じゃないってことですね。


と話していた。
 
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