是枝裕和が放送法を語る【放送法はメディアを縛る法律でなく、公権力を縛る法律である】

09:58

是枝裕和

画像引用:TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」


2017年10月13日に放送されたTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」にて、BPO(放送倫理・番組向上機構)委員長代行を務めている是枝裕和さんが「臆することなく放送を」と題して放送法について語っていました。

端的に言うと、「放送法は放送局を縛る法律ではなく、公権力を縛る法律」です。安倍政権はたびたび放送法を持ち出してメディアに圧力をかけていますが、公権力はメディアに圧力をかけるなと言っているのが放送法なんです。憲法の立憲主義と同じような誤解がまかり通っているんですね。きっと意図的にミスリードさせてんでしょうね。



■会話に登場する人物

荻上チキ (評論家)
是枝裕和 (BPO委員長代行 / 映画監督)
砂川浩慶 (立教大学教授 / 放送とメディアが専門)



是枝 あのー、放送法ってぼくもBPO(放送倫理・番組向上機構)はじめる前はそんなに真面目に読んだことなかったんですけど

チキ うん、法律はなかなか現物を読まないですよね

是枝 現場の人もねぇ、実はちゃんと理解できていないんだってことに気が付いたからなんですけど

チキ はい

是枝 一番のポイントはねぇ、たぶん(放送法)一条の「不偏不党」って言葉が、放送局に課せられている義務だって多くの人が勘違いしているんですよ。

砂川 勘違いしてるね
チキ ええ

是枝 それは実は政権与党も勘違いしているんですよ

チキ はい

是枝 「放送局は不偏不党でなければならない、だから偏向している」って言うんですけど

チキ うん

是枝 これ、不偏不党は公権力が放送局に保証しているんですね

チキ はい

是枝 「私たちはあなたたちに、私たちの権力を忖度しなくていい自由を与えますから自由に真実を追求してください」っていう法律なんですよこれ

砂川 そう
チキ はい

是枝 これ成り立ちから考えると明らかに日本国憲法と同じ趣旨で作られていて、権力と放送が結託した結果、起こしてしまった過去の悲惨な歴史の反省から生まれている法律なんですねこれ

チキ はい

是枝 なので、この不偏不党って言葉をきちんと理解するってことが、今実は・・・、特にこのことの理解ができていない、えー、人たちが、権力の中心にいるときは放送局が一番、これは自分たちの番組の自由を守るための盾に使える法律なので、実は

チキ はい

是枝 自分たちが責められるのではなくて

チキ はい

是枝 そのことを理解することが必要だという危機感をもとに書いている意見書で、えー、タイミングだと思います。

チキ うーん。放送法第一条を読み上げますと、「放送の不偏不党、真実および自立を保証することによって放送による表現の自由を確保すること」という文章ですけど、これ不偏不党というのは表現の自由を確保するって文章に繋がって、かかっているので、要は「偏向しちゃいけませんよ」っていうような形で命令しているのではなく、権力からの介入からの抑止

是枝 そうですね

チキ 権力は介入してはいけない、という独立性を謳っているということになるんですね

是枝 これ元々の成り立ち、1959年の放送法の制定まで遡ってみれば、これ明らかで

チキ はい

是枝 あのー、尚且つ、四条の倫理規定で、元々はこれ、今は総務省があたかもはじめから総務省にその権限が

チキ うん

是枝 えーと、放送を管理する権限があるような振る舞いをしてますけど

チキ はい

是枝 元々は電波監理委会が

砂川 そうですね

是枝 いわゆる公権力から距離をおく、とった、独立した第三者委員会が存在する前提で書かれている法律なので

チキ はい

是枝 まぁ2年で無くなっちゃいましたけども

チキ ええ

是枝 あの、そういう組織があってはじめてコレが、いわゆる罰則規制をそれに伴わせるかっていうのは非常に難しいところだと思いますけども、あの、法規範っていう解釈は明らかに法律ができた当初はなかったんですね

チキ うーん

是枝 それを自民党が恣意的に法律の解釈を倫理規範から法規範に変えたのは、1993年の椿発言というテレビ朝日のある事件をきっかけにして大きく舵を切ったので、

チキ うーん

是枝 自民党の中でもこの四条が倫理規範に過ぎないっていう認識はそれまでも40年近くずーっと継続されてきているんですね

チキ はい

是枝 だからあたかもそういう歴史がなかったのかのように今振舞っている

砂川 ホントですね

是枝 えー、のは、私たち放送関係者、BPOではなくて公権力の側だということをのをきちんと意見書の中で伝えたいというのもありました。




補足;椿事件とは

1993年、現首相の安倍晋三が初当選した選挙であり自民党が下野することになった選挙があった。この選挙でテレビ朝日の当時の報道局長、椿貞良が自民党が負けて連立政権ができることを応援するように指示したのではないかと産経新聞が報じた。

それが放送免許の更新の年だったためにテレビ朝日の放送免許取消し処分が本格的に検討され、椿貞良を証人喚問する事態にまで発展。

しかし実際に報道を検証した結果、テレビ朝日による偏った報道は見当たらず。郵政省は「厳重注意」ということで再び免許が更新された。



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