水道橋博士が語る松本人志論『松本人志はイチロー。ものが違う。敵う訳がない。』

17:23

2009年8月21日(金)に放送されたラジオ日本の「水道橋博士のラジカントロプス2.0」において浅草キッドの水道橋博士さんがダウンタウンの松本人志さんについて語っていた。同年代のお笑い芸人として松本人志さんを横から見続けていた水道橋博士さんが考える松本人志論は特筆すべきものがあります。お笑い好きは必見です。水道橋博士と松本人志

■会話をしている人物

水道橋博士 (お笑い芸人 / 浅草キッド)
植竹公和 (放送作家)


植竹 続きましてね、松本人志論、行きます。あのー、まずダウンタウンの漫才ってのを初めて見た時、率直にどう思いました?

博士 例えば、たけしさんやさんまさんやタモリさんっていうのは、僕らの世代で言えば王・長嶋・金田みたいに見えると思うの。芸能界に入った時に。

植竹 うん

博士 あーもう、これは大スターであり敵いようがないと委縮すると思うんだけど・・。ダウンタウンって今で言うイチローを見るような感じ・・

植竹 あー

博士 ・・が、確実にあった。

植竹 はぁー

博士 だから、そのー、『ガキの使いやあらへんで』を・・・ってか俺こういう話も一切したことないのは40歳までダウンタウンからの、の番組からの仕事ってのは全部断ってたの。

植竹 へぇー

博士 それは、何回か仕事の依頼はあったけども、その、臣は二君に事えず(注:忠臣は二君に事えず/忠臣はいったん主君を定めたなら心を変えて他の主君に仕えたりはしない。)みたいな気持ちがあって

植竹 ふふ(笑)あんあんあんあん

博士 ホントに・・

植竹 操を守ってた

博士 うん。ホントに凄いと思っているから、こそ、そこで奉仕してはならないっていう気持ちがあるからその仕事は受けないって感じだったけど、もう40歳過ぎて、それこそ30代くらいで自分はその、シーザー(注:カエサル/古代ローマ皇帝)じゃないみたいなところで降りている気持ちはあるし、凄いことは凄いんだってことを言いたい気持ちもあったから、これはもうオープンにするようにしたんだけど

植竹 やっぱ竹中労(注:問題作を数多く世に送り出し気鋭のルポライター)だなぁ。ルポライター気質だなぁ(笑)。うんうんうん。

博士 でもね、ホントにダウンタウンが売れて、売れだした頃に、その、たけしさんが『今ダウンタウンって凄いのか?』って飲みの席で言った時に、このー、取り巻きの人たちがみんな『いやぁ全然、全部たけしさんのモノマネですよ。』みたいなのをこう言っているのを聞いていると『全然違うよ』ってホントにもう、もう叫んでましたね。

植竹 あの僕も1989年にラママのスペシャルってのをやったんですよ。池袋の、池袋のサンシャイン劇場で。

博士 うん

植竹 で、ゲストにダウンタウン、と今田耕司、東野

博士 うん

植竹 を呼んだんですが、いやぁそん時に見た漫才ってのが今まで見たことがない漫才・・・なんか宇宙人襲来みたいなさ(笑)。すごいショックを受けました。でセンスがさ、ちょっとー、大阪じゃないですよ

博士 うん

植竹 ね?だけど、あの浜ちゃんがベタにバンと突っ込むから割と分かりやすくベタに見えるんだけど、やっていることはホント パルコ劇場でやっているような。・・結構都会的な発想のネタだよね、アレ。都会的っていうか・・

博士 何かね、範疇(はんちゅう)が・・・その後ダウンタウンが作るコントとか見ても、そのー、20年掛かっても誰も追いついていない感じがするんですよ。

植竹 あーそっか。

博士 そのー、まぁ今まで発表してきた週間単位であの、フジテレビでやってたやつなんかと比べても

植竹 うんうんうん

博士 他のコント番組でもアレを超えているものは無いって思うし、グラフで言えば波線がある

植竹 うん

博士 ちょっと飛び抜けている感じ?

植竹 うんうん

博士 ・・が自分の中には常にあってね。・・それ、マッスル坂井っていうプロレスラーで、その劇作家みたいな才能のある人がいるんだけど

植竹 はいはい

博士 その人がバラエティに出た時、『バラエティってのは強い奴が笑わせるんだ。』っていう感覚を言うんです。

植竹 ほー

博士 それはパワーオブバランスで強い奴が笑わせるっていう感覚ってのはバラエティに出ている人なら誰にでも有ると思うの

植竹 うん

博士 たけしさんが話せば笑わなければならない、っていう、感じ?

植竹 あぁー、あるね、あるね。

博士 もあるし、それがホントは強さなんだよっていうのは・・・ってか、笑いってのは面白さじゃなくて強さなんだよっていうのはテレビの世界に絶対的なルールで有るんだけどあまり語られないんですよ。

植竹 うんうんうん

博士 だけどダウンタウンも純粋に、新人の時から、それは積み重ねのキャリアの中で強さって重ねていくんだけど、もう一年目の時からホントに強いんですよ。

植竹 強いよね

博士 見てて、その。・・・自分が『ガキ使』を見だして、最初のうち漫才をやりだして、そっからフリートークに変えて数週経った時、もうこれ桁違いだと思った。

植竹 うーん

博士 もう全然。全然もうコレ敵う訳がない。・・・だからこそ自分の中で漫才をやる時には入念に書き込んだものをやり、テレビに出た時にはそういう・・なんだろ。うーん、猛獣使いみたいな役割をやろう、みたいなことで。その・・・例えばそのマッスル坂井ってのは汁レスラーを使って、弱いレスラーを使って演劇的な展開をするんだけど、

植竹 おお

博士 弱いことを前提に、その、劇を、プロレスを創っていく、劇空間を創っていくのね。

植竹 ほうほうほう

博士 だからダウンタウンなんかを見ると、自分の、このポジションとしてやるべきことって何かってのを、ほ、本当に強いよこの人って分かっちゃうんだよね。

植竹 うん

博士 その、イチローであることって、モノが違うよこの人

植竹 孤立しているよね、完全に。

博士 うん。もう違う。松本人志は全然メジャーリーグであり・・そのなんか、よく、あの才能を過剰に褒められている説みたいなの、常にあるけど全然俺、見合わないよって思いますもん。

植竹 あのー、さっき言いましたように、たけしさんのDNAってのがさ、博士とか太田くん(注:爆笑問題の太田光)とかあると思うんだけど、松本くんってのは無いでしょ?

博士 もうね、たけしさんの影響下にあって、あのー、発言しているんではなくて、『放送室(注:2001年~2009年にTOKYO FMで放送されていた松本人志のラジオ番組)』ってラジオを俺はずっと最初っから最後まで全部聴いてたけど

植竹 うん

博士 もう本当にライオンは同じことを口にするんだって思うほど、やっぱ似ているんだけど影響下では言っていないね。

植竹 そうだよね

博士 イズムの中では全然言っていない。ただ発想が同じになっていくってのはよく分かる。

植竹 うーん

博士 それは君主論だとか天才論みたいなところもあるし、きっとやっぱ大きいのは、その、貧乏っていうものの・・

植竹 あー

博士 ・・この創っているお笑いの雰囲気ってのは大きいなって思うけど

植竹 あぁそうか

博士 その生い立ちみたいなところでたけしさんは足立区出身でっていう、まぁ松本人志は、えー、尼崎出身でっていうとこで、そこで見てた風景とかそういうものの共通項からお笑いが生まれていくっていうか、お笑い意外に武器がなかったからこそ、その、貧者の剣であったみたいなところの、共通項が、その、若くして王にしたあと、同じ発想をさせるんだなと思うことはあるけれど、影響下にいるとは思えない。

植竹 だよね。でほら、あのー、松本くんがよく紳助さんを尊敬しているって言うけど、紳助さんのDNAでもないでしょ?

博士 うん、紳助さんは聴覚的な笑いってのを・・・松本さんもそういう例えをするけど、天才性のある、今やもう、テレビの王様になっていると思うけど、そーいう能力があるってのはよく分かるけど、そのね、造形的なお笑いのセンスみたいなところだから・・

植竹 うん

博士 例えばその才能を証明する時に、彫刻を彫れるかっていった時にパッと才能のある人と無い人と分かるじゃないですか。

植竹 うん、ハッキリわかるね。

博士 これ、絵というよりもっと難しいじゃないですか。

植竹 うんうんうん。

博士 そういう意味の彫刻性があるというか、造形的なもう絵が見えている感じってのが松本人志の笑いってのは常にあるし、そこに帯びているペーソス(注:悲哀、哀愁)みたいなのもあるし・・・やっぱちょっと、並みじゃないなって思うし。

植竹 そうだよなぁ

博士 あのー、筒井康隆の短編なんかに影響を受けているのかなとか思うのね。

植竹 まぁ、それ例える人いるよね

博士 いやだけど、筒井康隆の短編の、その新潮文庫でずっと出た頃の『熊の木本線』とかあの辺のずっと似ているモノって沢山あるんだけど絶対読んでないのね。

植竹 読んでないでしょ。そりゃそうなんだよ、恐らく。

博士 絶対に読んでない。

植竹 そこがさ、どっからあんな発想が生まれるのか・・

博士 だから漫画家になったって成功していると思うのね。(注:松本人志は小さい頃、漫画家になろうとしていたと語っている

植竹 うーん

博士 そーいう、ギャグ漫画家になったとしても。だからそういう事で語れて、演じられて。だからこそ映画監督になるべき人だと俺は思っているね。


と話していた。



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コメント

  1. | URL | -

    笑いの発明者としては私は過大評価と考えています。
    ギャグ漫画というものがあります。
    松本さんの幼少時には既に続々と実験的な笑いが研究、発表されており、思春期ないし青年期には革新的な手法が既に完成されていました。
    これらは今読んでも現在のテレビで観られるお笑いなどよりよっぽど前衛的であり、尖ってます。

    三次元で表現するとなるとそれなりの技術が必要とされるのは理解しますが、ほとんど脚本に近いほどのお手本が既に世に存在しています。
    これを吸収し、大衆的に表現できたコメディアンとしては一定に評価するけども、ダウンタウンのやったことと言うのはいわば、輸入と輸出でしょう。
    漫画から輸入し、東京へ輸出した。

    こう言うことがあまり世に知られないのは、第一には漫画が文化に影響を与えると言うことが日常化していた事と、団塊の世代が大人になるに差し掛かって、所詮漫画の風潮が高まり、漫画離れが始まっていた所が交差して、 実際に行われている相互関係がまるでフィクションのように捉えられてしまい、定説化してしまっている部分にあると考えます。


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