2012年11月22日にTBSラジオで放送された「ニュース探究ラジオ Dig」にて、「日本の司法制度と死刑」というテーマで語られていた。ゲストには一部で『悪魔の弁護士』とも呼ばれている安田好弘弁護士が登場。安田弁護士が担当したオウム真理教・地下鉄サリン事件や和歌山カレー事件、光市母子殺害事件などについて語っていた。 | ![]() |
■会話をしている人
安田好弘(弁護士)
青木理(ジャーナリスト)
江藤愛(TBSアナウンサー)
青木 やっぱり安田さんが一番非難されたのはですね、光市の母子殺害事件だと思うんですね。メールでも着てました。
江藤 うん
青木 で、そのことをちょっと聞きたいんですけど、例えば江藤さんなんかご記憶かなぁと思うんですけど、そのー、まず主張が荒唐無稽であると。
江藤 はい。そうですね、なんかドラえもんがってのは『それは本当なのかなぁ』って思うし、それをなんか、弁護する気持ちってどんな気持ちなんだろうってのは凄く気になりましたね。
青木 いかがですか?
安田 あの、僕なんかは事実は事実としてしっかりと出していくべきだろうと、うんな風に考えているんですね。事実が、これを喋れば有利になるとか不利になるとか、そういうもの・・・つまりバイアスを掛けてはいけないという風に思っているわけです。で、あの事件で、やはりあの、今仰ったようにドラえもんの話が出てきました
青木 うん
安田 彼の口から出てきたわけですね。で、当然僕の中ににもそういうものを出せば、あぁー、荒唐無稽な話をしているという風に非難されるかもしれないということも当然僕の中で考えました
江藤 うん
安田 しかし彼は、あの事件をやった時にどうだったか、問われているわけでしてね
青木 うん
安田 10年経った時にどうだったかじゃないんです。あの事件の時に彼は何を考え、何が頭の中に去来したかという問題なんですね。で、当然時間をかけて彼からどうだったかということを話してもらうと。でもちろん話してもらった中身を僕たちの中で検証していくわけですね
青木 うん
安田 で、あの事件で重要だったのは、やっぱし大変彼が幼かったと
江藤 うん
安田 年齢的には事件を犯したときには18歳と1カ月だったんですが。あの、私の、私の目から見ても大変幼い、中学生のような感じだったですね。中学生でも中学校1年生・・・な感じでしたね。それで、そういうその、まぁ家庭の中で虐待を受けて、そしてお母さんが亡くなられて、そういうショックの中で成長が止まってしまった
青木 うん
江藤 うん
安田 で、あのぅ、精神科医の人、先生とか、あるいは心理学者の先生などにもやはり、あの、彼と接触して頂いて色んな意見を頂いたりしたわけですけど、やはり皆さん、『彼は成長が止まっている』と。
江藤 うん
安田 『幼いままの状態である』と。しかも、現実と非現実、まぁ現実とファンタジーの世界、そういう中で生きてきた。
青木 うん
安田 という話なんです。
江藤 うん
安田 で、そういうところで彼のドラえもんの話が出てくるわけですね。恐らく彼はその時そう思ったんだと思うんです。
江藤 うん
安田 つまり自分がやってしまったことを、どうすることもできない。しかしドラえもんはやっぱしあの・・・僕はあんまり漫画は、ドラえもんの漫画は見ていないんですけども、夢をかなえてくれる。出来ないことをやってくれる。つまり自分がやってしまったことを元に戻してくれると。いう思いで、だったんだろうと思うんですね。
青木 うん
安田 彼が、ドラえもんということは。大変象徴的な、言葉だし、彼もホントすがるような気持ちだったんじゃないかなと思うんです。それはそれで彼が語る、実際に彼がその時にそう思った、としたら大変大切な事実ですから
青木 うん
安田 それはやっぱり法廷に出すべきだし、その元に彼がやったことを理解すべきだろうと、いう風に思ったんですね。
青木 あのー、その、とにかく被告人である、あのー、少年ですね。が、そういう風に言ったと。まぁドラえもんっていうことを言ったと。まぁ安田さんたち弁護団が、あのー、調べてみる限りでは、そのー、幼かったということも含めて何か子供の頃にお母さんが目の前で自殺しているんですよね?
安田 まぁ目の前というか・・
青木 遺体を見付けちゃったんでしたっけ?
安田 もう少し正確に言いますとね、お母さんが自殺されそうだったものですから、まぁ、お父さんに『危ないからしっかり見といてね』って、言って、あの、寝てしまうんですね。で朝6時にお父さんに起こされた。お母さんがガレージの中で自殺してられたと。で、起こされて下に降りてきた時には台所の、そのフローリング、木だったかなぁ、木の床の上に、横に、横たえられていたと。・・・いうところを彼は記憶しているんですね。
青木 うん
江藤 うん
安田 まぁそういう状況を体験していて、で・・・まぁそれは大変、その、中学校1年生ですから、厳しい体験だったんでしょうね。それからまぁ、その前にかなり激しい虐待も受けていたわけですねぇ。
続いて語っていたのは、元少年Aによるドラえもん発言の真相について。
青木 あのー、わかるんですけどね
安田 はい
青木 あのー、光市母子殺害について言うと、その一審は無期懲役ですね。最初の一審ですね。でその次二審は無期懲役と
安田 はい
青木 でその後最高裁が『これはおかしい』と差し戻すと。
安田 はい
青木 そこから安田さんたち弁護団が担当したわけですよね。
安田 そうですね、あの、差し戻しする直前・・ですね。
青木 直前ですね
安田 あのー、弁論の日にちが入って、そしていよいよ判決という、直前に引き受けたってことになるんですけどね。
青木 うん。でね、その段階で、その、先ほど言っていたドラえもんとかね、まぁドラえもんというのはあまりに象徴的なので『ドラえもん、ドラえもん』と言うのはあまり良くない気もするんだけど、まぁドラえもんとか、そういうのが出てくると
安田 うん
青木 で、ご遺族の立場、被害者遺族の立場からするとね、『そんなことお前、一言も言っていなかったじゃないか!』と。
江藤 そうですよね、急に・・
青木 『何を今更言い出すんだ』と。『それもこんな荒唐無稽なことを』っていう気持ちも、まぁ十分わかるなっていうかね、まぁ分からなくもないなって思うんですけど、その辺はどういうことなんですかね
安田 まぁ私が一審の弁護人をやったわけじゃないんですけど、彼、の話を聞いてたりするとですね、事実について聞かれていないんですね
青木 うーん
安田 それから、彼自身が自分がやったことはどういう事なのか、まともに理解できていなかった部分もあるでしょうね。それから高裁になってからもやはり事実について聞かれていないんです。
青木 うーん
安田 まぁ裁判所で被告人質問ってありましてね、で、彼が法廷に立って、『何をやったの?』って形で弁護人とか裁判官、検察官から聞かれるわけですけど、ほとんどまともに事実を聞かれていないんです。
江藤 うーん
安田 で自分がやったことって自分から話すことではありませんから、人に聞かれない限り話せないわけですし、自分がやったことを振り返るなんて大変怖いことですから、なかなか自分から話すってのは難しいんですね。
青木 うん
安田 でしかし、やはり、その、しっかりコミュニケーションを取っていくと、いう中で初めて彼は自分がやったことを語れるようになると。
青木 うーん
江藤 うーん
安田 まぁ彼にとってもやっぱり痛恨の思いのことですし、思いだすだけでも怖いことですし、そして、ましてやその、精神的には凄く幼いですから自分を表現するってのは得意じゃない。
青木 うん
安田 ましてや弁護人なんてのは大人ですからね。シンパシーなんて感じるわけありませんでして。ですから、こちらから一生懸命こう聞いていかないと、彼は語れないと、いう事なんでしょうね。だからそういう話がずーっとずーっと後になって出てきた。逆に言えば、10年も経って、そして20歳を超えて、でようやく話すことが出来るようになったと
青木 うん
安田 ・・いうのが後になって出てきたことの真相だろうと思っているんですけどもね。
次に、捜査段階の供述の矛盾について語っていた。
江藤 杉並区49歳の方のメールです。『死刑反対はわかります。でも赤ちゃんを泣き止ますため、赤ん坊を泣き止まそうと首に蝶々結びをした所、きつく締まり過ぎてしまい赤ん坊は死んでしまった。これも傷害致死に当たる。泣き止ますために蝶々結び?こんな詭弁を弄してまで現状の仕事を継続される意図を聞きたいです。被害者への冒涜と考えられたことはないんでしょうか?』
青木 いかがですか?
安田 これは事実の問題ですからね。あの、ストーリーとしてどういう物語を作り上げるかじゃないんです。客観的事実がどうだったかということです。ね、そうだとすると、あの、紐は本当にキツく結ばれていたんだろうか
青木 うん
安田 もしキツく結ばれていたのだとすれば、あの、紐がですね、食い込んでいって、皮下出血といいましてね、あの、いわゆる紐の、接している皮膚の下には出血が起こったりするんですね。そういうものが起こってならなきゃならないんですけども、この事件の場合はそれが無かったんですね。つまり紐の跡はあるけども紐で厳しく縛った跡が無いんです。ですから、そういう事実から逆に追いかけていくわけですね。・・・で、彼の供述、捜査段階の供述はですね、もう、手の指が白くなるぐらい力一杯ですね、あの、縛ったというんですね。
青木 うん
安田 しかしそうだとすると、例えば、そのー、中の筋肉が断裂していたりですね、あるいは表皮が剥がれていたりしなきゃならないんですが、そういうモノが全く残っていない、わけですね。
江藤 うーん
安田 そーっと結んであるわけですよ。でそういうところから、やっぱり事実を見ていくと、いう風になるんですね。
青木 うーん
次に語っていたのは、元少年Aが獄中から友人に送った手紙の内容について。
江藤 はい、あのユーさんからのツイッタ―なんですけども『安田さんはあの手紙についてはどうお考えなんだろう?光市の加害者が獄中から友達に送ったあのトンデモ無い手紙。強がりなのかそれとも。』
青木 うん、この手紙もね、すごく批判を浴びてましたねぇ、その・・
江藤 そうですよね、被害者遺族に対して、なんか言ってましたよね
青木 まぁあの、なんだったっけ、同じ、その、獄中仲間っていうかに発信した手紙で、まぁ非常に被害者、まぁなんか、『俺は謝っているふりをしているだけなんだぜ』的な手紙だったんですけれども、あの手紙っていうのはどんな風に安田さんご覧になっているんですか?
安田 そうですね、あの、彼は全然もう反省という・・・何を反省していいか分からない
江藤 うん
安田 なぜ自分がここで裁判、で何を問われているかも、分からないと。そういう状況の中で書いた手紙だと思うんですね。で、まず彼が書いたのではなくって、彼の、こう同じような所に入れられているですね、その人から来た手紙に答えているわけです。
江藤 うん
安田 ですから、彼の手紙を理解するためには、彼にどういう手紙が来て、その手紙にどう答えたかという、その、いわゆる来た手紙と出した手紙と両方対で見ないとなかなか理解できないんですが来た手紙が、大変挑発的なんですね。
青木 うん
江藤 うん
安田 で、彼を称えるわけですよ
江藤 うん
安田 こんな、その、若い奴が、こんなドでかい事件をやったと。君は凄い!って感じのですね。『将来作家でもなったらどうだ』と。そういう感じの手紙とか、あるいはもっと性的な手紙とかがですね、来ましてね、まぁ彼はそれに乗っちゃうわけですね。
江藤 乗る。うーん。
安田 で、乗っていいのか、乗ることがどれほど酷いことなのかと、いう事さえも理解できなかったと。
青木 うーん
安田 というのが実情ですよね。
江藤 うーん
続いて、一審二審の弁護と安田弁護士の弁護士としての信条について語っていた。
青木 あのー、安田さんのお話を伺って思ったのは、その、この事件ね、これ凄く嫌な言葉なんですけど量刑相場っていう言葉があってね、その、だいたい何人殺したら死刑とかがあるんですね。
江藤 あ、はい。
青木 その時の弁護士さんってのはたぶん・・どっちの弁護士さんが良いとかは別としてね、その、『この事件はとにかく死刑は回避するんだ!』と。ハッキリ言えば、事実なんかはどーでもいいと。とにかく『申し訳ない、申し訳ない』と、『子供だったから本当に申し訳ない』という風に言って、・・のが弁護なのか、あるいは、その『事実を見ようよ』と。で、『事実を見ると違うところが一杯あるじゃない』と。『それを土台にした上で物事を見ようよ』という弁護士さんとがいらっしゃって、安田さんはやっぱり、どちらかというと後者にこだわると。
江藤 うん
青木 つまり、『事実が無かったら何もならないじゃないか!』っていうことなんですね
安田 そうですね、まぁそうでないとこの仕事をやっている意味はありませんからね。その量刑相場がどうかっていうので、手を抜いたりするわけにいきませんからね。
江藤 うん
安田 で、この事件、今でこそ死刑ってことになっているんですが、過去において、およそ死刑にならなかった事件の中身なんですね。ですから一審も、二審の弁護士の人も争わなくって『静かに、早く終われ』と。
青木 け、『警察の仰っている通りです』と。
安田 という事なんでしょうね。本人も幼いものですから、何も喋らないと。法廷で喋らせないというような思いもあったと思うんです。で、ああいう形で弁護人が期待した通りの、あるいは予定した通りの無期懲役の判決が出たと。
江藤 うん
安田 ・・・いうことですね。しかしそれは検察が、作ったストーリーと言っていいんでしょうね。例えば『子供さんを殺してやろうと思って頭上から床板に叩きつけた』とね、いうようなストーリーがそのまま残るわけですね。今仰ったように『力一杯、紐で二重に締めた』と。いうような話も出てくる。で、そのままが真実だということになるわけですね。
江藤 はい
安田 そうすると『トンデモない!』という非難が巻き起こってくるんですね。
更に、番組の後半でリスナーから寄せられた意見について答えていた。
江藤 ツイッタ―でAKM001さんなんですが、『安田弁護士さん、いい人だとは思うんだけど被告を疑うっていう観点がスッポリ抜け落ちている気がする。コイツの言うことは本当なのか?言い逃れじゃないのか?そこを見極めないといけないし光市のはそれが余りにも分かりやすかったのに全部主張したからおかしいと思う訳で。』と。
青木 うん
江藤 そしてミミカキさん、『安田弁護士の気持ちや仕事に対する姿勢を理解しようと聞いていますが、今のところ私には理解できません。被害者への気持ちはどう思いますか?もし弁護した少年Aが出所して再犯したらどう思いますか?』
青木 これ、せっかくなんで、この2つにだけ答えてください、安田さん。まず、被告が疑うね、アレが足りないんじゃないかと。こういう意見ですけども。
安田 なるほどね。うん。それはちょっと違いましてね、弁護士ぐらい疑う人はいない
青木 うーん
安田 職業、立場の人はいないと思いますね。やっぱし、私どもは段段(きだ/物を細かく切り刻むさま)で付き合っているわけですから、で彼を理解しようとするし、同時に彼をこう、ホントに分析してみようと。結構辛辣な立場にいるわけでしてね、やっぱしそういう立場ですから、丸々、被告の言うこと、依頼者の言うことを信じるってことはまず無いですね。
青木 うーん。例えば、こう言って欲しいと、言って、それがウソだったと、いう場合ですね。
安田 うん
青木 安田さんなんかは、ウソは言わないっていうことですか?
安田 うん、そうですね。やっぱし1つひとつ彼の話を色んなもので裏付けていくと
青木 うん
安田 あるいは専門家の意見を聞いてみる・・・いうことですね。例えば光の場合ですと、光市の場合ですと法医学者、2人の先生に、まぁ最高裁ですともうひと方増えて3人の先生に、専門家に意見を聞きましたしね、心理学者は5人の先生に話を聞きましたし、精神科医はお1人の方に聞きましたけども。やっぱりそういう専門家の知識も、あの、私たちの・・借りてですね、事実を検証していくわけです。
青木 もうひとつね
江藤 はい。『もし弁護した少年が出所して再犯したらどう思いますか?』。
安田 彼はやらないでしょうね。
青木 うん
安田 というのは、あの事件そのものが独特のこう、シュチュエーションの中で起こったケースでして。
青木 うーん
安田 あのー、殺害しようと思って殺害したわけじゃなくてですね。あるいは、あの、強 姦しようとして、あの襲ったわけじゃありませんでして
青木 うん
安田 結局、被害者の中に自分のお母さんを見てしまったんですよね。だから抱きついて行ったんですよ。でところが、もちろん被害者の方はビックリ仰天ですから、で、ビックリされると。でそれを抑えようとすると。そういうところで事件が起こった、ケースなんですね。ですから同じようなシュチュエーションは無いでしょうし、彼は自分がやったことに関してトンデモナイことをやったと思っていますから、で、あの時期より彼は成長してきていますから、やっぱり2度とあんなことは起こさないと、私は思いますね。
と話していた。
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